人事生産力と人時売上高
昔、ハワイの和食屋さんで働いていた時、気さくだけど仕事がスーパーとろい現地の人がいて、いつも日本人のおばちゃん従業員達に呆れられていて、”ハワイだから許されてるんだろうけど、日本じゃありえないんだけどねー”と言われていた従業員のMさんがいました。
確かにいつも笑顔で憎めない奴だけど、本当にやる事が全て遅い。
年齢は若干20代前半の若者。
いつも彼のところでオーダーが詰まって、そこで溜まってしまう。
彼にしてみれば、一生懸命に早く仕事をしようとはしてない感じ?というか、普通に頑張っているつもりなんだろうけど、側から見るとやっぱりとろい。
そもそも彼に何を期待していたのだろうか?
いい奴なのは別として、とにかく普通に素早く動いて欲しいだけである。
和食屋だから日本人が一番働き易いので、現地の人には少し不利なのか?
ハワイって土地柄、日本人の顔をした日本文化を意外にしっかり受けてきた日系人も沢山いる。
ハワイに限らず、アメリカは人種のるつぼっていうくらい多種多様に人種がいます。
人種にこだわっていたら、良い人材を雇用する事なんて出来ない。
そんなの差別にすらなりかねないです。
なぜか日本人だから良く見えてしまうとか、仕事が出来そうだなんて思ってしまうのは、なんだか根拠のない古い考え方みたいに思えます。
それにしてもこの手の話は良く聞きます。
やっぱり日本人じゃないからねーなんて。
でも、こんな考え方は直ぐに捨てたほうが良いと思います。
ハワイには日本人より優秀な現地人の方は沢山いますし、海外から来ている優秀な方達も沢山います。
もちろん優秀な日本人の方だって沢山います。
つまりは生まれた環境で多少違うのはありますが、人種でどうこう言うのはナンセンス。
そこで人事を判断するなんて、全くもって根拠の無い事。
しかし逆にいうと、海外で働いた経験がない方には、今までに出会ったことのないようなびっくりするような人も見るでしょうし、考えられない様な人もいます。
しかし、そこには文化の違いや常識の違いというのがあります。
ちょっとしたズレだけで人を判断してしまうのは勿体無いですが、そこには限度もあると思います。
こんな事は日本では考えない様な事かもしれませんが、ガッチリ日本人従業員で固めて日本らしさを色濃くする事で、差別化出来ている海外の日本食料理屋も存在しない訳ではありません。
島国育ちの日本人には、陸続きの欧米諸国の人間と同じ感覚になれというのは難しいのです。
人種に囚われず、言葉の障壁も乗り越えて、しっかり自分自身で人事をこなせる様に面接したり、雇用の採用不採用を判断できる様になるまでには時間はかかりますが、私の経験上2年もすれば大体判って来ます。
それでも5回に1回くらいはハズレを引いたりもしますが、自分自身でやっている分には確実に人を見る目は上がっていきます。
人事は感覚的な事で判断するのではなくて、やはり数字でしっかり判断しなければいけません。
前置きが長くなりましたが、そのための目安になるボーダーラインが人事生産力です。
これは飲食店を経営されている方には、当たり前のことですが、つまりは読んで字の如く人的な生産力を時間で表したものです。
似たような言葉で人事売上高というのもありますが、両方とも飲食店経営の人事には絶対に欠かせないものなので、ここでしっかり憶えておきましょう。
まず人事生産力とは?
$10のネギを全部切るのに30分でできるAさんと、60分かかるBさんがいるとします。
Aさんは最近雇ったばかりの人で時給は$15、Bさんはもうベテランで5年も働いてくれており時給は$20もします。
この2人が切ったネギは同じ量の$10の物ですがAさんが切ると人件費が入るので$17.5になりますが、Bさんが切った場合人件費が入って$30になってしまいます。
最終的に人事生産力がAさんとBさんでかなり違うということが一目瞭然です。
いくら頑張ってネギを安く仕入れても、人事生産力が低い人が仕込むと高いネギになってしまいます。
Bさんの方が長く働いてくれているからというだけで過大評価してしまい、本当にお店に利益をもたらしてくれるAさんの方が賃金が安いというのは、間違った人事です。
これではそのうちAさんはやる気を失ってしまい、やめてしまうかもしれません。
結局、仕事の出来ないBさんが高給で居残ってしまっては、お店にとっての将来の利益は見込めないでしょう。
これが感覚だけで人事をやっているダメ経営者に良くあるケースです。
冷たい言い方かも知れませんが、Bさんが良い人かどうかは置いておいて、ワーカーとしてはあまり評価できません。
Bさんに情で給料を払うくらいなら、Aさんの時間をもっと伸ばして給料も上げる方がお店にとっては良い事です。
これともう一つ、人事売上高とは何でしょうか?
これは的確に人員を配置する為にとても便利な数字です。
良く人件費は25−30%に抑えなくてはいけないという事が言われていますが、これはあくまで最終的に25−30%になったといった場合が殆どでは無いでしょうか?
それよりかこの数字は狙って出して行くべきだし、必要なければ25%より低くする事も不可能ではないです。
お店というのは忙しい時間帯もあれば、暇な時間帯もあります。
でもこれも感覚で何となく忙しそうだから、多めに従業員を入れておこうとかではなくて的確に理論的に人員を配置します。
その為にはお店の人時売上高を知っておく必要があります。
これはお店の総売上➗総労働時間です。つまり1日の売り上げが$2000で1日の総労働時間が40時間なら、人事売上高は1時間一人当たり$50になる訳です。
この数字を知っていればランチタイムの12−1時の1時間の売り上げが$ 300ならはこの時間帯は常に6人の従業員を配置していれば良いということになります。
ランチが終わってその後スローダウンして1時間$150しか売り上げないのに、3時まで6人いるとすると毎日3時間3人分も余計なコストを払っているという事になります。
これが1日くらいでは大した事はないですが、1ヶ月、1年も続けてしまうとあっという間に深刻な問題になりかねません。
1日を通して無駄なく人員を配置し、無駄なコストは省かなくてはいけません。
この数字は最低でも1ヶ月に一度は数値化し、調整するべきです。
的確な人事生産力を知っていれば、余計な人件費が減り、利益は上がっていくはずです。
飲食店で一番のコストは今も昔も人件費です。
これをどれだけ抑えることができるかが、利益を最大化するための鍵です。
売り上げは常に時間毎にも出して、その流れは見ておかなくてはなりません。
今日は簡単に人事生産力と人時売上についてお話いたしましたが、正直これは超有料級のお話です。
実際にこの2つを見直して、赤字から黒字に転換した事は何度もあります。
当たり前ですが、一番コストのかかるところを見直すのが一番効果的です。
是非、利益が出なくて悩んでいる飲食店経営者の方、この2つを見直してみて下さい。
必ず良い効果が出ると思います。
今日は飲食店経営のコツともいうべきお話をさせていただきましたが、これからもこんなタメになるお話をしていきたいと思います。
飲食店経営は決して甘くはありません。
多忙な経営者には時間も限られていますし、何しろ長期戦です。
余計な時間はありません。
しかし、ポイントさえ知っていれば時間も節約できますし、長きにわたり利益を出し続けてくれるもの凄いビジネスです。
次回もまた皆様にとって有益な情報を発信していきますので、楽しみにしていて下さい。
それでは、また!