飲食店のオーナーは資本主義、従業員は社会主義

私トシ伊藤は日本で20年、ハワイで13年、飲食店を経営して来ました。

今現在もハワイで飲食店を経営しています。

飲食店というのは当然ビジネスですので、日々利益を出し続けて成長し続けなくてはなりません。

それと同時に、従業員の雇用や教育もやらなければいけません。

当然、非常に小さい規模の零細企業であれば、経営から人事まで何から何まで経営者である本人自身がやるのが当たり前の事です。

私もそうでしたし、正直今でも殆ど自分でやっています。

初めは誰に教わった訳でもなく、学校で習ってきた訳でもないので、殆ど自分の感覚と性格だけでやってきた様なものです。

日本とハワイで約20年余り、離れた距離ではありますが、行ったり来たりで続けて来ました。

こんなに長い期間続けていたにもかかわらず、今でも飲みに行ったり仲良くしているのは、共に戦ってきた従業員ではなく、同じ様な境遇の孤独な経営者達とです。

勿論、たまには普段一生懸命働いてくれている従業員達と、送別会や歓迎会的な事で飲みに行ったりする事もありましたが、気楽に腹を割って飲みにいったりする事はあまり無かった様に思えます。

何故なのか?

そこには見えない壁が間違いなくありました。

こう言うと、ちょっとおこがましい様にも聞こえますが、経営者と従業員とでは心の奥底から出る理想や欲求というものに違いがある。

もっと言いますと、賭けている物が違う。

 

飲食店としてお客様に喜んで欲しい、美味しいと思って欲しいという経営者と従業員の共通したゴールは当然ありますが、経営者はその先も欲深く利益を追求していくという事が、実は真の喜びでもあります。

ここについては中々従業員と共有できる部分では無いし、むしろ経営者が孤独にガッツポーズをとるところだったりします。

 

経営者が従業員にやる気を出してもらう為には、色々な手段を使います。

政治でいうと、選挙などで政治家がよく街頭演説などで”私が当選した折には〇〇を皆様の為にやります”と言っているのに似ています。

経営者が従業員にやる気を出してもらう為に”売り上げが〇〇になった際には皆様にボーナスとして〇〇を払います”みたいな感じです。

ちょっと大げさかもしれませんが、こんな風に思ってしまう事が無かった訳ではありません。

経営者と従業員は正直、水と油の様なものです。

偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、現実はそうです。

思想が違うのに上手くやっていかなくては会社として成り立ちません。

そう言った部分では小さな国家の様にも見えたりします。

利益を追求していかなければ、簡単に倒れてしまう社会で生きる資本主義バリバリの経営者と、ある程度決められた給料で働いている従業員は社会主義で生きている様に感じる事があります。

 

一見、同じ会社という箱の中で同じ思想で働いているように見えても、壁を感じてしまうのは当然の事だと思うのは根本はこういう事なのかもしれません。

 

旧ドイツや朝鮮半島、旧ベトナムもそうですが国家としてもこの資本主義と社会主義が折り合わずに分裂してしまう程に難しい事なのに、飲食店経営は資本主義と社会主義を融合させるという、難しい仕事だなと….大分、大げさですが思わなくもありません。

 

家族経営の夫婦でやっているラーメン屋が上手くいくのは、資本主義のお父ちゃんとお母ちゃんが経営しているから。

会社を経営するって事も、社会も学校や色々なコミュニティーも、この思想の違いで2つに割れてしまう事は多々あります。

それを理解した上で手を取り合って、上手くやっている国家もあれば、紛争になってしまう国家もあるって事は、会社経営や社会や学校、コミュニティー等にもいえることだと思います。

 

政治や経済、国際情勢とそこまで広く学ぶということは、結局細部を理解出来るという事にも繋がってくるものだなと、思うという話でした。